Earthstar Wild Foods
Stephen and Lauren
Credits
Photography - HIRO
Interview -MINA
「フォレージング(自然採取)とは、自然の恵みを収穫するだけではありません。私たちの周りの恵みに感謝、尊重することです。どこに何があるのか、その知識をもっている人は少ないですが、とても大切なことです」
BC州の森で自然の恵をお探しですか?BC州とバンクーバー周辺の地域で、野生のキノコやベリー類をフォレージングすれば、まったく新しい味覚体験ができるはずです。フォレージングは私たちと自然とのつながりを再確認させ、食物のルーツを気づかさせてくれます。
Earthstar Wild Foodsのスティーブンとローレンは、2020年のCovid-19パンデミックが起こったときにフォレージングを本格的に始め、たちまち虜となりました。そして、小規模なフォレージングビジネスへと発展したのです。
スティーブンにとって、料理は常に情熱の対象であり、料理を通じてフォレージングに出会いました。彼の祖母は2人とも素晴らしい家庭料理人であり、庭から収穫したばかりの新鮮な食材を使って料理をするのを見ていました。「食は家族の中で常に大きな意味をもっていました。10代のころは、自分が料理人になるとは思ってもみませんでしたが、料理を始めてから、自分がどれだけ料理が好きか気づかされました。」スティーブンがシェフになって14年、現在は地元のアパレル会社Aritzia本社のカンパニーキッチンで働いています。
ローレンにとっても食は大きな情熱です。中東、ナイジェリア、フロリダで育った彼女は、幼い頃から様々な食文化に触れてきました。「食は私にとって異文化を理解する手段でした。」と語るローレンは、現在、地元の高級レストラン「Published on Main」で働いています。ローレンとスティーブンの出会いも、もちろん食がきっかけです。BOTANISTと言うレストランで共に働いてた2人が意気投合したのは言うまでもありません。シェフであるスティーブンは、地元で獲れる新しい食材を試したいと常に思っていました。そして、彼は独学でフォレージングを学び始めました。ローレンは2年前までフォレージングをする機会がありませんでしたが、趣味でフォレージングをするようになってからは、その世界の虜になりました。「私がそっだた国々ではフォレージングの習慣がありませんでした。スティーブンとフォレージングを始めた時は、楽しさと同時に、少し不安や、神経をすり減らすような感じでしたが、すぐのめり込みました。」
趣味で始めたフォレージングフードでしたが、次第に友人たちから購入したいという声が増えていき、小さなビジネスに発展していったのです。スティーブンは、Aritziaのキッチンにもできるだけフォレージングの食材を取り入れています。「うちのシェフたちは、私たちがやっていることを支持してくれていますし、地元の食材をサポートするのがとても好きなんです。特にあまり食べる機会のない新しい食材を取り入れる事は素晴らしいことです。毎日、”イラクサって何?"、"モレルマッシュルームって何?"といった質問をされます。そして地元食材をもっと好きになってもらえるように工夫を凝らし上手に料理を作っています。」
5月のある晴れた週末、スティーブンとローレンは、VOICEストーリーのために私たちをフォレージングの旅に連れ出してくれました。五感をフルに使ってキノコ狩りをしていると、なぜ彼らが夢中になるのかがよく理解できます。フォレージングは楽しく食物を採取する行為だけではありません。私たちを育む環境を理解し、尊重する事を確認する貴重な体験でした。
VOICE (V): 年間のフォレージングシーズンのカレンダーはどのようなものですか?
Stephen(S):「春になるとすぐに、イラクサ、マイナーレタス、エルダーフラワー、オイスターマッシュルームなどの採集が始まります。モレルマッシュルームも春に穫れる大好きなキノコです。山火事があった年は、その場所をマッピングし、翌年のフォレージングに役立てます。気温、湿度、標高など、キノコの生育に影響を与える要因はさまざまです。冬になるまでの週末は、いろいろなキノコを採取し過ごします。バンクーバーでは、運が良ければ12月下旬から1月上旬まで、ウィンターシャントレルのようなキノコも採集することができます」
V: 今までで一番遠くフォレージングに行った場所はどこですか?
S:「ユーコンまでロードトリップをしたことがあります。それは素晴らしい経験でした。ノースウエスト準州との国境近くまでドライブしましたが、道中通り過ぎるどの地形もとてもユニークでした。なだらかな丘陵地帯、火山地帯、削られた山々、平地、草原、湿地、そして果てしなく続く森をドライブしました!」
Lauren(L):「ユーコンの最初のキャンプ場に到着しテントを張ろうと外に出ると、少なくとも20種類以上のキノコが一カ所に集まっているのが目にとまりました。それは信じられないような光景でしたよ!」
V: フォレージングする際の独自の規則はありますか?
S:「ベアスプレー、水、食料、着替え、そして予備の連絡手段 を常に携帯しています。また、周辺を荒らさないよう最善を尽くします。行った場所に何も残さない。正直なところ、車なしで行けるなら行きたいと思いますが、残念ながら現実的ではないです。また、自然の恵みを食料とする他の動物にも配慮するようにしています。生き物全てにとっての恵みなので、必要最低限の採取しか行いません」
L:「特にベリー類は貴重です。昨年は山火事の影響でベリーを見つけるのに苦労しました。通常クラウドベリー、ブラックベリー、サーモンベリー、ハックルベリー、ワイルドストロベリー、ドワーフブルーベリーなどのベリーを摘みますが、昨年は手を付けず動物のために残すことにしました」
V: Earthstar Wild Foodsはどのような仕組みでしょうか?
S:「 私たちは多くのシェフや食品業界の友人を知っていて、彼らは私たちがフォレージングしていることを知っています。時々、私たちが何を持っているか、特定な何かを採取して来てくれないかなど連絡をもらいます。ウェブサイトもありますが、Instagramや個人的に直接コンタクトをとってくる人がほとんどですね。私たちは商業的なフォレージングに反対しているわけではありませんが、純粋にフォレージングが好きなんです。2人とも平日はフルタイムで働いているので、週末は自然の中で楽しく過ごしながらフォレージングをする。無理なく趣味の延長線上のビジネスとして小さくやっていきたいと思っています」
V: Earthstarの意味は何ですか?
S:「アーススターは、とてもファンキーな種類のキノコです。星のような形をしており、その中心には球状の胞子嚢があります。空気が乾燥しているときは、風や外敵から胞子嚢を守るために、胞子嚢の周囲にポイントが折り畳まれます。空気が湿っているときや、雨が降ったときには、ポイントが開き胞子嚢が露出し胞子が放出されます。ローレンと私は内向的な性格なので、このキノコに共感する部分があります。普段は大人しいけれど、人に会うと心を開き、自分たちの知識や商品を広げていく、そんなイメージです」
V: 気候変動がフォレージングに与える影響を感じますか?
S:「モレルマッシュルームに関しては山火事の恩恵を受けますが、山火事が地域やコミュニティーに与えるマイナスな影響は大きいと思います。昨年は暖かかったのでシャントレルの発育は早かったですね。また、残念なことにいくつかのフォレージングスポットは森林伐採によって壊滅的な打撃を受けています 」
L: 「松茸も昨年は早かったですね。8月、9月頃には1本見つかりました」
S:「野生の植物だけではありません。多くの動物も異常気象の影響を受けて大変なことになっていますよね」
V: あなたの1番好きなキノコとその楽しみ方を教えてください。
L:「いろいろなキノコが好きですがポルチーニ茸の味は最高ですね!松茸は見つけるのが楽しいですし、霊芝は見た目が好きです。それぞれ好きなところが違うので、どれか一つはなかなか選べませんね!」
S:「私はモレルマッシュルーム が大好きですね。生え方がとても面白いし、見た目も宇宙人みたいで。モレルマッシュルームはソースとよく絡むので、料理として旨みが凝縮されます。またモレルマッシュルームは山火事の後、新しい生物を生み出すのに役立っています。モレルマッシュルームの外側にある小さな穴が植物の種子を受け止め、種が成長し、キノコから飛び出し、破壊された土地に新しい生命を生み出す理想的な環境を作りをしています」
V: スティーブンさんのお気に入りのモレルマッシュルームのレシピを教えていただけますか。
S:「大きなサイズのモレルが手に入ったら肉詰めがおすすめです。モレルには深い味わいがあるので、濃い色の肉と一緒に合わせるとおいしいですよ。バター、タイム、ガーリックでソテーした代表的なモレルの一皿もおすすめです。また、アスパラガス、エンドウ豆、フォドルヘッド、イラクサなどの季節の野菜ともよく合います」
V: あなたにとって、食とは何ですか?
S:「”食 “について語る時、決まり文句なしには語れません。“食は全て”です。食は人と人を結びつけ、コミュニティを作り、栄養を補い、生命の循環を生み出すものです」
L:「”食”は生きていくために必要なものです。私たち2人は、生きるために食べると言うよりは食べるために生きるタイプの人間ですけどね」