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Photography - HIRO 
Text - MINA


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Klippers Organic Acres

Kevin and Annamarie Klippenstein, co-owners

Credits

Photography - HIRO 
Interview - MINA

“私にとって食とは、栄養を味わう旅です。私たちの社会では、しばしば「食べるために食べる」という習慣がありますが、私たちは「味わうために食べる」という言葉を信じています”

- Klippers Organic Acres

 

バンクーバーで4月から10月まで開催されるTrout Lake Farmers Marketに行ったことがある人ならば、必ずKilppers Organicのスタンドを目にしていることでしょう。新鮮でたくさんの種類のフルーツや野菜が山のように並び、ドライフルーツや瓶詰めにされたお手製ジャムやピクルス、ブレッド、アップルサイダーなど、ワンストップで全てのオーガニック食材が揃う、マーケットの中で一際賑わっているスタンドです。

彼らは毎週土曜日このマーケットに出店するために片道4時間をかけて、カナダ内陸部オーガニックキャピタルとして知られるCaswtonと言う町から来ています。22年前にCawstonでKilppers Organic Acresを始めたオーナーのKevinとAnnamarieは、2人共チリワック出身で高校時代からの幼馴染です。Kevinは若い頃からレストランサービス業に興味を持ち、Annamarieは「農業が彼女の血の中に流れている」と言っても過言でないほど、BC州産オーガニック農業のパイオニア的存在でいるForstbauer家の出身です。世間的にまだオーガニックという言葉が一般的ではない頃から、オーガニックとバイオダイナミック農法の道筋を歩んで来ました。

そんな2人がCawstonで購入した5エーカーの土地は今では60エーカーに拡大。オーガニック農業だけでなく、ファームを身近に体験できる宿泊施設、100%自社農園で生産された食を扱うレストラン、毎日フレッシュな手作りベーカリーを提供するカフェ、直売マーケットまで経営するまでに成長して行きました。KIippers Organicは、農業が持つ新しい可能性を常に推し進めると同時に、「食べ物はどこから来るのか?」と言う問いかけに対し、数々の事業を通じて誠実な答えを示しています。

彼らの農地は、急斜面の山に挟まれ、細長い河が蛇行するシミルカミーン渓谷の真ん中に位置しています。周りには他の農場やワイナリーが点在し、乾燥地帯に存在する緑のオアシスのような場所です。そんな美しいロケーションの中で、農薬や何も使わず、自然のパワーが凝縮した野菜やフルーツの味が格別なのは言うまでもありません。彼らは本来食べものが持つ味を人々に伝えるために日々情熱を注いでいるのです。

ちなみに、Klippersのマーケットプレイスで購入したメロンの味は、他のどこのオカナガンチェリーよりも力強く濃厚でした。その味を知ってしまったら、他でこれ以上の味を見つけることは難しいでしょう。本物の食を経験させてくれるのがKippers Organicなのです。オーガニックの真髄と共に生きる夫婦二人三脚の人生の旅路を伺いました。

VOICE(V): お二人の出会いと、Klipper's Organicsを始めたきっかけを教えていただけますか?

 

Kevin(K): 私はチリワックのサーディスという町で育ち、若い時からホスピタリティ関連の仕事に興味がありました。最初はレストランの皿洗いから始めて、最終的に高校卒業する頃にはキッチンスーパーバイザーになり、その後チリワックの地元レストランでフルタイムのマネージャーとして働きました。高校卒業後はビジネスの学位を取るためフレイザーバレー大学で夜間コースを受講しながら、アルバータ州のレッドディアという町で、新しいコンセプトのレストラン立ち上げに1年間携わりました。チリワックに再び戻った後、チリワックのベストウェスタンホテルで飲食部門のマネージャーとなり、アシスタントジェネラルマネージャーに昇進、同時期に、幼馴染のアンナマリーと再会しました。彼女はバンクーバーの仕事を辞めて地元チリワックに帰ってきたばかりで、ホワイトロックのファーマーズマーケットで、両親の手伝いをしていました。私は毎週日曜日は彼女とマーケットで過ごすために休みをとっていました。一緒に時間を過ごす中、食を生産する立場から自分たちのビジネスを提供するアイデアを考え、農場探しから全てがスタートしました。そんな折、勤めていたホテルのレストランに来たお客さんから、彼女の母親がCawstonで5エーカーの土地を売りに出すと聞いたんです。この土地には桃、リンゴ、杏、ネクタリンなどの果樹が4エーカー含まれており、温室もありました。夢のような条件が揃っていて、2001年の感謝祭の月曜日にその土地を訪れることを決めました。その土地に立った時、私たちは即座にその場所とのつながりを感じ、ためらうことなくそれを購入する決断、Klipper’s Organicsを創設、旅の始まり告げる印象的な瞬間となりました。

 

Annamarie(A): 私はチリワックの有機農場で生まれ育ちました。父方の家族はドイツ出身で、私たちの家族は伝統的に有機農業を行っていました。高校卒業後、私はエンジニアリングを学び、バンクーバーのバー&グリルで働きました。人生は巡り、結婚、離婚の後、私は両親の農場に戻りました。そしてケビンと再会しました。当時、私は子供たちの食べ物が生まれる場所を知ることに興味があり、22年前その望みを形にしたKlipper’s Organicsが生まれ、今、最高潮に達しています。農業は単なるビジネスではなく、私たちのライフスタイルそのものです。多忙ではありますが好きなことをしていると、まるで夢の中を生きているかのようです。

 

V: 2001年に最初に移住したときのCawstonはどのような場所でしたか?

 

A: 最初にここに移住したとき、わずか2つのワイナリーしかありませんでした。Crowsnest Vineyardsと、Orofino Vineyardsのジョンとヴァージニア・ウェーバーが、私たちと同じ年にここに移住しました。もう農業ができなくなった高齢の隣人からも徐々に土地を引き継ぎ、私たちの土地保有面積は5エーカーから60エーカーに拡大しました。私たちは20代で農場を始めましたが、その頃の農家は60代の方がほとんどで、私たちがここに引っ越してきたとき、「あなたたち、何バカなことしてるんだ?」と言われることが多くありました。当時、子供たちは大学に行き農業以外の仕事を見つけるよう親が勧めていた時代でしたから。

 

K: 農業に対しクールな印象を持てない時代でしたので私たちが農場を持つことはまるで狂ったことのように思われがちでした。一般的に多くの農家は安値で収穫物をパッキングハウスに売り、一般の人々とは直接取引していませんでした。その点から見ても、満足感が少ない職業だったと言えるでしょう。私たちの場合、当初から人々に食について教育を行いたいと考えていたので、農産物をファーマーズマーケットで販売し、顧客と直接やりとりを行っていました。

 

V: レストラン事業であるRow Fourteenや他の事業はどのように生まれましたか?

 

K: まず、バンクーバーから農場を体験しに来る人々のために、各1100平方フィートある4部屋のゲストスイートを建設しました。各部屋には完全装備のキッチンがありますが、ゲストは滞在中によくどこで食事をしたら良いか尋ねるので、それがレストランのアイデアに進化して行きました。そして都市部のシェフと地域のワインペアリングを行うロングテーブルディナーなどイベントを通じ、ここで恒久的なレストランを持つことについて本格的に話し合いました。

しかし、レストランを開くことを決めたとき、農地委員会(ALC)の取り決めで、私たちの農場内にレストランの営業許可が下りないことが判明。その打開案として、農場でアルコールを生産、販売することがレストランオープンすることの条件と知りました。そして2019年、果樹園で育てた有機リンゴから作られたUntangled Craft Ciderを提供するファーム・サイダリー併設の、ファーム・トゥ・テーブルレストラン、Row Fourteenをオープンしました。

 

A: レストランオープン後は、のお客様から新鮮で美味しい食材がどこで手に入れられるか、またスイートに泊まったゲストからは、朝、美味しいコーヒーやパンがどこで手に入れるかよく尋ねられます。またここに長く住み、コミュニティについて知ったもう一つの事は、コミュニティの人たちが集う場所がなかったことでした。これらに応える形で2年前、Marketplace and Cafeをオープンし今ではコミュニティーの人が集う中心地になっています。

 

K: ビジネスする上で、私たちは常に人の声に耳を傾けてきました。彼らが何を望んでいるかを聞くためにファーマーズマーケットに立つことは大きな利点です。農場を始めたとき、今ある様々な事業を持ちたいと思っていたわけではありません。お客様のニーズに応える形で様々なビジネスを育んでいます。誰も育てていなかったシシトウ(辛い唐辛子の品種)を育て始めたのも、お客様の要望から生まれた一つの例です。

 

V: あなたたちの考える有機農業は何ですか?

 

A: 私の両親は1970年代に有機農業を早くから受け入れた人々でした。子供の頃から母親と一緒に長いテーブルの周りに座って、有機農業の基準と原則を書き留める姿を鮮明に覚えています。母親はカナダの有機業界のパイオニアとなり、政治的な側面にも深く関与し、カナダで有機とは何を意味するのかを定義しました。後に、彼女はBC有機認証協会の創設者兼会長、BCファーマーズマーケット協会の会長、GMOラベリングの提唱者となりました。

 

K: “有機”という用語は今、BC州全体で公式に規制されており、認証されていない限り、それをラベルとして使用することはできません。この発展には利点と欠点があります。良い面では、これによって有機が本当に何を意味するのかについての認識が高まりました。その一方、有機が主流になるにつれて大手企業が参入し、しばしば有機ラベルを取得するために最低限の条件だけを満たす方法をとっています。また異なる国々ではそれぞれ独自の有機認証基準があり、これら異なる基準が国内に導入されることで混乱を引き起こす可能性があります。

私たちの商品を購入するお客様は、有機の散布剤さえ使用しない私たちの、より「自然な」有機農業哲学を理解し商品を手にしています。

 

A: 散布剤は、それが有機かそうでないにかかわらず農場の生態系を崩します。共生的でバランス良く機能する生態系を生成することが必要となります。

 

V: 有機認証を取得するのは難しいですか?

 

A: 有機認証を受けるにはたくさんの書類作業が必要です。単に農業を行うだけでなく、全体のプロセスが関与します。私たちは第三者の監査を受け、毎年2回の検査を受けます。 時折、抜き打ちの訪問もあります。これは有機食品生産者にとって日常の一部ですが、これは私たちが言葉だけでなく有機農業を実践していることを消費者に証明することでもあります。

 

K: ちょうど先週、私たちは検査を受けました。検査官は午前9時に現れて、8時間ほど滞在しました。徹底的に私たちの収穫記録を調査、すべての請求書を詳細にチェックしました。認定を受けていない場合、ルールが何であるかさえわからないかもしれません。たとえば、私たちの検査官は私と一緒に、隣人との境にあるすべてのバッファゾーンを調査しました。仮に彼らが散布を行ったとしたら、散布ラインから25フィートの距離を測定しなければなりません。その25フィート以内に私たちの農地が含まれている場合、そこで生産された作物に有機ラベルは付けられなくなります。数字のことになりますが、私たちの農場規模で年間で3,000ドルの認証料を支払っています。しかし、小規模な運営で売上が最小限の場合、支払わないか、300ドル程度の認証料になるはずです。認証を受ける余裕がないと言う人もよくいますが、それは必ずしもコストが高いわけではないと思います。

そして興味深いのは、ファーマーズマーケットに来る人たちは、すべての出店者が有機農産物を販売していると勘違いしていますが、現実は異なります。今のファーマーズマーケットではコンプライアンス担当者が巡回し、有機表示に虚偽がある場合、罰金を支払うか有機のラベルを取り下げなければなりません。私たちの農地があるCawstonはカナダ有機農業の中心地で、有機農業に移行したいと思っている農家を引き寄せる魅力的な場所です。ここでは散布剤を使う人々を心配する必要はありませんからね。

 

V: コミュニティでのあなたたちの役割を教えて頂けますか?

 

A:Farmers Feeding Families」というプログラムがあります。このプログラムの使命は、助けを必要としている単身親家庭にCSA(コミュニティ支援型農場)シェアを提供することです。昨年、11家族をサポートし、今年は14家族をサポートしています。しかし、私たちの責任はそこで終わりません。シーズン中、この取り組みをバックアップするために常に募金活動を行っています。国際女性デーには募金活動を展開し、その日私たちのカフェのすべての販売収益をこのプログラムに直接寄付しました。今年は、低所得家庭の就学前の子供たちを支援する団体であるOneSky Community Resourcesと提携しました。私たちは単に言葉だけでなく、リスクをとり、トレンドを作り出す行動に重点を置いています。私たちの考え方は、夢を生き、最高の人生を生き、自分自身に忠実でいることです。この考えはグループ全体に伝わっています。

 

K: 私たちはコミュニティリーダーでありコミュニティ構築に情熱を持っています。Annamarieは地域の子供スポーツチームを指導・コーチングしていますし、私自身もボランティアの消防士であり、OCP(公式コミュニティプラン)の元メンバーであり、BCオーガニック農業研究所の議長も務めました。また過去5年間、BCターキーマーケティングボードの議長を務め、現在はBCチキンマーケティングボードの議長を務めています。

 

V: あなたの地域で気候変動を感じていますか?

 

K: メディアから度々気候変動についての問い合わせを受けることがありますが、はい、山火事は発生します。人由来の山火事以外は森林再生の自然なサイクルで私たち人間がそれを止めようとしているだけです。一方、農業は独自の課題を抱えています。我々は雹、早霜、あるいは湖が凍りつくことに対処しなければならないことがありますが、これらも過去20年間、私たちの生活の一部にすぎません。完璧な年なんてほとんどありませんからね。

 

V: ファーマーであることの一番難しいことと一番の喜びは何ですか?

 

A: 私にとって、一番難しいのは誤解されたり、過小評価されたりすることです。反面、私たちが彼らの食べ物を育てているからこそ、私たちをセレブリティのように扱ってくれる時もあります。シーズンの初めに小さな種を植え、手間をかけ育て、お客様に渡る豊かな食べ物を生産する時間は魔法のようです。かつて小さな種だった人参は人々の栄養となり体の一部になります。そんな瞬間に携われる行為に非常に喜びを感じています。

 

K: マーケットのお客様が私たちの農産物を選ぶ光景を目にする時、非常に喜びを感じます。それは心温まる光景です。さらに素晴らしいのは、お役様との世代を超えたつながりを築いてきたことです。かつて私たちの食べ物を楽しんだ子供たちは、今では大人になり、自分の子供たちに私たちの提供するものを引き継いでいます。これは私たちが長い間コミュニティと育んできた関係とよく似た美しい循環です。これら瞬間に対し非常に満足感を感じています。

 

V: 食はあなたにとって何を意味しますか?

 

K: 栄養。これは他の人に尋ねると良い質問でもあります。なぜなら、私たちは自分の身体に何が入っているかをあまり気に留めないからです。

 

A: 私にとって食は栄養と味の旅です。私たちの社会では、しばしば「食べるために食べる」という習慣がありますが、私は「味わうために食べる」という言葉を信じています。りんごをかじると、どんな経験をしますか?それは味の交響曲のように感じます。私たちのスパルタンりんごを「ストロベリースパルタン」と呼んでいますが、それは信じられないほどの苺のアンダートーンを持っています。ゴールデンデリシャスアップルはバナナのトロピカルなニュアンスがあります。りんごは単なるりんごではなく、異なる品種ごとに異なる独自の味の冒険があるのです。したがって、私たちは皆、「味わうために食べる」という考え方に変わるべきだと思います。

 

V: 若いファーマーや農業を始める人々にアドバイスをお願いします。

 

A: 尊敬し、信頼できるメンターを見つけて、彼らが共有してくれる知識を全て吸収してください。

 

K: 農業を始める事を考えているなら、まず土地を購入してください。そして、その土地を隈なくリサーチしてください。水に困らないことや良い隣人がいるかを確認してください。始めたらビジネススキルが非常に重要であることを覚えておいてください。私たちの農場に来る多くの人は、農場で働くことがロマンチックだと感じてしまっています。私たちはそのギャップを埋め、彼らに現実と、ファーマーとして成功する方法を教えようと努力しています。大量のニンジンを育てても売る方法を知らなければファーマーとして成功することはできません。サステイナブルであるためにはビジネスを知る必要があります。

Klippers Organic Acres

Kevin and Annamarie Klippenstein, co-owners

Farm • Market • Restaurant • Cider • Suites
625 Mackenzie Rd, Cawston BC

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