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Photography - HIRO 
Text - MINA


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The Local Harvest

Dan Oostenbrink,
farmer and owner

Credits

Photography - HIRO 
Interview - MINA

「The Local Harvest は妻と子供たちと一緒にゼロから作り上げた草の根的ビジネスです。私たちは、地域社会においしく、安全な食料を提供しています。食料生産者と人々を再び結びつけ、地元で食の循環を作ることが可能なことに気づいてもらいたいのです。この10年、大きなチャレンジをいくつも乗り越えてきました。「死なない程度の苦労はあなたを強くさせる」と言う言葉どおり、私たちのビジネスはより強く成長しています」

 

ハイウェイ1号線でチリワックに入ると、ここに住みたいと思うほど素晴らしい場所があります。The Local Harvest(ローカルハーベスト)は、37エーカーの農場に設立されたオンファームマーケットで、有機栽培の旬の食材、Anita’s Organic Millsを使った焼きたてパン、その他地元に根付く多くの商品を幅広く扱っています。2013年の設立以来、The Local Harvestの使命は、「年間を通じて地元で作られた食品のみを提供すること」です。その壮大な使命をダンさんはたった10年で成し遂げました。そして、文字通り、彼の家族は農場で暮らし、ここで生産する食材のみを食べて生活しているのです。

4月中旬にVOICEがダンさんを訪問した際、ファームツアーをしてもらいながら、食材がどこから来て、どのように栽培されているのかを詳しくお話してくれました。ダンさんが栽培出来ないものはないと思えるほど、実に沢山の種類の野菜や植物を育てています。サラダ菜、大根、ピーマン、キュウリ、芽キャベツなどの野菜はもちろん、ナス、エアルーム品種のトマト、レモングラス、ジンジャー、ターメリックなど、スーパーではほとんど見かけないような地元産の品種がずらりと並んでいます。一番驚いたのは、太陽光発電の温室でチリワック産のレモンやライムが育っている光景を目にした時でした。「レモンの花ほど香りのいいものはないでしょう」とダンさんがにこやかに案内してくれた温室は、濃厚なジャスミンのようなレモンの花の香りが空間いっぱいに広がっていて、思わず夢心地の気分にさせてくれました。 

ここで幸せに暮らしているのは、植物だけではありません。野鳥、ヒヨコ、牛、豚、そして地中にはたくさんの小動物や生き物がいて、みんなそれぞれの役目を持って、農場で「労働分担」しているのです。例えば、VOICEが訪問する前日。ダンさんは飼育している30頭の豚を放し、冬のカバークロップ(被覆作物)であるライ麦を食べさせ、別の作物を植えるスペースを準備していました。ライ麦は1日で綺麗になくなり、お腹いっぱいの幸せな豚たちは、自分たちの排泄物で土壌を肥やしてくれます。すべての生き物は象徴的な関係を生み出し、それこそがThe Local Harvestの真髄なのです。
 

ダンさんと過ごした2時間のうちに、私たちは彼の自然農法に対するビジョンと、地元の食料システムを変えるため、たゆまぬ努力している姿勢に感銘を受けました。The Local Harvestは、地元産の食品への理解と愛情を深めてくれる学校のような場所でもあります。マーケットの営業時間内に農場も一般公開されているので、ダンさんと一緒に情報満載のファームツアーを予約してみてはいかがでしょうか。また、彼のオンラインガーデニングコースでより深い知識を学ぶこともできます。

地消地産の社会を実現するために活動している人の声を通して、地元で採れる最高品質の食材の美味しさをぜひ味わってみてください。一度その味を知ったら、ダンさんの思惑通り、地元の食べ物をもっと食べたい、もっと応援したいと言う気持ちになること間違いないでしょう。
 

VOICE(V)The Local Harvestはどのように始まったのでしょうか?

ダン(以下、D): 私は数学と科学の高校教師でした。私の父は灌漑事業で成功し、この土地を購入しましたが、土地は使われないまま放置されていました。それを売ろうとしたとき、「農業をやりたいか」と聞かれ、私は「はい」と答えました。父は、私がガーデニングや農業に興味があることを知っていたんです。私は農業について正式に学んだわけではありませんが、カーティス・ストーン、ジャン・マルティン・フォルティエ、エリオット・コールマン、ジョエル・F・サラティンなど、私の中ではアイドル的存在のマーケット・ガーデナーたちについて勉強しました。彼らの著作を読み、農場でたくさんのことを観察し、とにかく試してみることから始まったんです。ファーマーズマーケットにはたくさんのベンダーが参加していますが、実際のファームを見ることはありませんよね。ですから、人々がThe Local Harvestに来たとき、その食べ物がどこで作られたのか目の前で見てもらう事が出来るんです。農業の厳しい現実と美しさを伝えること。それが、私たちが2013年から続けていることです。 

V : あなたの農業における最も大きな原則は何ですか?

 

D : 私たちは「不耕起栽培」をしています。土を耕すことなく、再生可能な農業を行うという考え方です。葉っぱ、小枝、棒など、自然界では沢山のものが土を覆っていますし、地中には水分や栄養価の高い生態系がある。栄養価の低い土壌は、植物を苦しめ、免疫力を低下させ、害虫や病気を撃退することができません。農家が農薬を散布すると、その分土の中の生物がより多く死んでしまい、状況は悪化するんです。ですから、私たちは土を自己攪拌することはありません。その結果、農場には害虫や病気がほとんど存在しません。これは驚くべきことです。

2つ目の原則は「生物多様性」です。一年草の植物、小さな果物、ベリー、ナッツ、種子、そしてたくさんの花など、農場にはさまざまな種類の植物が共に生育しています。鳥、蜂、蝶、その他多くの小さな生き物もやってきます。もうすぐスズメが木に巣を作りにやってくる時期です。害虫を駆除するためにスズメが必要で、このような生物多様性を促進するのが私たちの農業です。

V : パーマカルチャー・サステナブル・再生農業の違いは何ですか?

 

D : 最近は難しい言葉を使いたがる人が多いですが、どれも同じような意味です。ある意味、パーマカルチャーはそれらをすべて包含しています。私は、自然農法という言葉がシンプルで一番いいと思っています。自然農法とは、自然を模倣し、自然のパターンに従って農業を行うことを意味します。自然界では、どこにいても地面には必ず植物が生えているので、農園では常にマルチ(植物の分解物)で地面を覆い、常に緑の植物を置いています。そうすると、土の表面には分解を助けてくれるさまざまな生物がたくさん育まれます。農場で害虫になる虫は5,000匹に1匹くらいでしょうか。大多数は善き虫であり、みんなバランスを作っています。農場にはモノカルチャーではなくポリカルチャーが必要であり、自然の生態系の多様性を模倣しているのです。

V : 農場で栽培できないものはありますか?

 

D : この地域で栽培できるものは何でも栽培します。現在、農場には約200種類の植物が植えられています。サステイナビリティ(持続可能性)やフードセキュリティ(食料安全保障)に忠実であるためには、一年を通して野菜だけでなく、栄養価の高いあらゆる種類の食材を提供する必要があります。ナッツや種子のような高タンパクな果物は、現在増えている菜食主義者のニーズにも応えるため栽培を試みています。農場には、2年目になるヘーゼルナッツの木が3列、7年目のクルミの木もあります。フードセキュリティの持つコミュニティを築くには長い時間を要するのです。早くても10年から20年はかかるものです。 

 

V : The Local Harvest」の設立当初から、フードセキュリティは重要な考えだったのでしょうか?

 

D : 正直、始めた当初は深く考えていませんでした。当初は、もっと商業的な農業方針だったんです!私たちの最初の考えは、テクノロジーが農家を救うというものでした。スプレーや除草剤、農薬の使用を計画し、機械設備に投資し、土壌科学者の話を聞くことが基本と思っていましたからね。そのメンタリティーで1年目、スプレー必須として知られているカリフラワーを育てていました。しかし、忙しいあまり時間を忘れて私たちはスプレー散布を忘れてしまったのです。驚いたことに、それでも美しいカリフラワーができました。目から鱗が落ちる思いでしたね。1つできれば、1000はできる。そう思って、もう化学薬品は使わないで、完全に自然なオーガニックな道を選んだんです。その結果、収穫量が増え、害虫の被害が減り、ガーデニングの楽しみが増え、ガーデニングの美しさも増しました。 

食で地元を支えるという考え、また本当にサステナブルであるならば、肥料、種、労働力を外部に頼ることはしたくない。すべてをコミュニティの中でまかなうことができるようにしたいのです。だから、マーケットでも、この地域で採れたものだけを提供するようにしています。そのため、夏場だけでなく、冬場でも食料を生産し確保する方法を考えなければならなくなりました。食材を安定的に生産するために、生物多様性は農場にとって必須なのです。フレーザーバレーにはたくさんの農地がありますが、そのほとんどは牛がミルクを出すための餌(牧草)を育てるモノカルチャーです。多様化した農場はほとんどなく、農家もごくわずかです。若い人たちは農業をやりたがらない。そのため、カナダの農家の平均年齢は56歳(2021年時点)となっています。フレーザーバレーは地球上で最も肥沃な土地のひとつで、トップ10に入ることは間違いありません。なのに私たちの食材のほとんどは輸入品で、大量加工されています。この状況を変えるには、生物多様性のある農場、オーガニック農場、再生農業、そして一年中地域コミュニティのためのに食料を栽培するための農地の再増殖が必要です。

 

V : The Local Harvestがわずか10年の歴史しかないことを考えると、あなたは大きな成功を収めたと言えるでしょう!

 

D : そう思いますけど、私だけではありません。農場で働いてくれる皆で成し遂げました。私は5人の子供に恵まれた大家族で、長男はマーケットでベーカリー担当、長女は花の栽培を手伝ってくれています。三男は肉類(豚肉、鶏肉、ガチョウ、アヒル)をすべて担当し、家族全員が農場であらゆる仕事を手伝ってくれています。私たちは、既存のビジネスにさらなる層と利益を加える「スタッキング」ビジネスの一例です。

V : 地域のフードセキュリティを高めるために、私たちが出来ることは何でしょう?

D : まず地元の食品を買うことです。特にあなたが積極的に農業やガーデニングをしていない場合、または農業をしたくない場合にこれは最適な方法です。一人一人がフードセキュリティを達成する上で重要なプレーヤーなのです。アメリカの思想家、ウェンデル・ベリーの有名な言葉で「食べることは農業行為である」と言ったように。あなたが何を食べるかを決めるとき、その行為は農場、良質な食品、地域経済のサポートに投票することになるのです。

また、近所の農家さんと仲良くなり、農場のこと、彼らの家族や歴史のことを話したり学んだりするのも良いでしょう。深く知ることで、それが人の心に愛着を持たせ、信頼関係のレベルが変わってきます。農家は近隣の人たちに最高品質の食材を提供できるように常に努力しています。食を育てるスペースがない都会の人たちは、マイクログリーンや栽培ライトを使えば、キッチンなどのスペースでもガーデニングができることに驚くはずです。フードセキュリティを高めるには、あらゆるクリエイティブな方法があるのです。

V : 現在、取り組んでいるコミュニティ活動があれば教えてください。

D :  私たちは、かつてThe Salvation Army(救世軍 と呼ばれる慈善団体)の「Plant a Row, Grow a Row」と呼ばれていたプログラムに参加しています。1999年に始まったプログラムで、もし自分の家族のために5列の野菜をガーデンで育てたら、6列目を地域の恵まれない人たちの為に育てよう、というものでした。しかし、時が経つにつれて、このプログラムはフェードアウトしてしまいましたが、近年復活しました。2023年には、「Plant a Row For Us」と改名呼され、同じく救世軍のパントリー・プログラムのために新鮮な栄養食品を調達する目的で活動しています。私の近くに住む地域の人々や私のガーデニング講座を受講する生徒約200人に、このプログラムのために余分な食料を育てるよう勧めています。救世軍のコミュニティ・パントリー・プログラムは、収入が生活必需品をまかなうのに十分でない人々のためのものです。デリカテッセン、ベーカリー、乳製品、農産物、冷凍食品などの品揃えで、必要な時に食料を調達することができるのです。

V : 一番好きな野菜とそのレシピを教えてください。

D : 私はサツマイモとトマトの栽培が好きです。料理はあまりしないのですが、もぎたて新鮮なトマトは最高です!

V : 1年のうちで一番好きな季節はいつですか?

 

D : おそらく秋でしょう。9月から10月に入ると、まだトマトやキュウリ、ピーマンといった太陽を好む夏野菜が収穫されると同時に、カボチャ、スイカ、ハニーデュー、カンタロープ、カブ、冬大根といった秋の野菜も収穫する時期です。最も食が豊富な収穫期ですね。 

 

V : 農作業をしていない日の過ごし方は?

 

D : 3~4年ごとに、世界各国の農業を学び、現地の食文化やカルチャーを理解するために、海外旅行に出掛けます。これまでキューバ、バリ、そして昨年はタイに行きました。旅行以外では、ほとんど家の中にいて、農業や経済、心理学などの本を読んでいますね。

 

V : CSAプログラムはあるのですか?

 

D : はい、Valley to Shoreというビジネスを通じて、バンクーバー市民向けの配送ハブとなってもらっています。オンラインオーダーが可能で、2週間分のボリューミーで季節感あるフレッシュな野菜ボックスが届きます。私たちはさまざまな野菜を栽培しているので、毎週スペシャル感があります。ジャガイモ、セロリ、ビーツ、ニンジンなどよく料理に使うものは必ず入れて、そして新しいユニークなものを加えています。いつでも誰でもオーダー出来ますよ!

 

V : 子どもたち全員が農家になることを願っていますか?

 

D : そうだといいんだけどね!今、溶接工をしている息子が一人アルバータ州に引っ越しましたが、他の子供たちはみんな、ここの農場を手伝ってくれています。最終的には、みんな農家になると思いますよ。できれば各自小さな農場を保有して、食べ物を育ててほしいですね。 

 

V : もしあなたが農家でないとしたら、何になりたいですか?

 

D : 私にとって農業以外の人生はありません。私は生涯、農家です。もし考える必要があるとすれば、治療のために健康的な食べ物や栄養を使ったヘルスケアに関わることでしょう。これも食べ物に頼っているので、やはり農業なのでしょう。
 

Local Harvest

Dan Oostenbrink, Farmer and owner

No-till, no-spray, carbon-sequestering, soil-regenerative farmers in the Fraser Valley. WORM 🪱 FARM AND COMPOST. Monday- Saturday 9 am to 5 pm.

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